― 変わらぬ価値観とともに、次の世代へ ―
リバプール主将フィルジル・ファン・ダイクにとって、「キャプテン」という肩書きはピッチの内外を問わず重い意味を持つ。
アンフィールドのメインスタンドにある自身のエグゼクティブボックスに腰を下ろした彼は、リーダーとしてクラブを背負う責任について穏やかな口調で語った。
9年目の誇り──“リバプール・ウェイ”を継承する者
2018年の加入以来、ファン・ダイクは320試合以上に出場。
そして今年5月25日、彼は35年ぶりに観客の前でプレミアリーグ優勝トロフィーを掲げたキャプテンとなった。
その瞬間、彼はクラブの歴史に名を刻んだ。
4月に締結した2年の契約延長を経て、34歳のリーダーは今もなお頂点を目指す日々を送っている。
彼が大切にしているのは、勝利よりも「文化」だ。
「最も重要なのはクラブの文化です。それは決して変わらない。リバプールには、すべての人が守るべき価値観がある。ハードワークし、世界中のファンのために戦うこと──そこからすべてが始まるんです。」
「僕がこのクラブに来たとき、監督はユルゲン・クロップ、主将はジョーダン・ヘンダーソンでした。彼らが見せてくれた“リバプールの価値観”を、今も僕は受け継ぎたいと思っている。それが“リバプール・ウェイ”。僕たちの成功の原点です。」
「イングランド最大のクラブであり続けたい」
ファン・ダイクは、リバプールというクラブの“理想像”を明確に描いている。
「イングランドで一番大きなクラブであること。それが僕たち全員の目標です。優勝し続け、トップに立ち続けたい。でもプレミアリーグは本当に難しいリーグなんです。」
彼はプレミアリーグの現行体制で優勝トロフィーを掲げたわずか2人のキャプテンのうちの一人(もう一人はヘンダーソン)。
その責務は、単なる試合のリーダーにとどまらない。
世界中にファンを持つリバプールにおいて、社会的メッセージを発信する際の慎重さ、誠実さもまた“キャプテンの仕事”だ。
ファンと共にある時間──「それが僕の誇り」
この日、彼がアンフィールドを訪れたのは試合ではなかった。
カドバリー社とのパートナーシップの一環として、リヴァプールを40年以上支えてきた熱心なファン「ジュールズ」さん(元教師)をサプライズ訪問するためだった。
「ファンからもらう感謝の言葉は、いつも特別です。それを当たり前とは思わない。僕たちは毎日、好きなことを仕事にしていて、それを多くの人が応援してくれる。ファンを驚かせる時、そのリアクションは純粋で、いつも心が動かされるんです。」
「話を聞き、人生や考え方を共有する。そういう瞬間が、自分に“視点”を与えてくれるんです。」
「人としての印象こそがレガシー」
「カドバリーとの活動では、“人々に忘れられない一日を届ける”ことを大切にしています。会った人が安心して、自然体で話せるように。僕はスポットライトの中で生きているけれど、同じように父親であり、悩みもある普通の人間。だからこそ、ファンと共感できる部分がたくさんあるんです。」
「人は僕に先入観を持つかもしれない。でも、実際に会った後に残る“印象”こそが本当の遺産だと思う。ピッチの内外で良い影響を残したい。それが僕の目標です。若い世代を励まし、模範であり続けたい──それが僕の誇りです。」
「タイトル防衛は最も難しい挑戦」
半年前、契約延長交渉の最中にファン・ダイクは「この夏は大きな変化の夏になる」と語っていた。
そしてその言葉通り、リバプールは総額4億5000万ポンドを投じてチームを再編成。
フロリアン・ヴィルツ(1億1600万ポンド)とアレクサンダー・イサク(1億2500万ポンド)という英国史上最高額の補強を2度も成立させた。
「タイトルを守るのは本当に難しい。僕たちは2020年の優勝後にそれを達成できなかったけど、シティはやり遂げた。クラブは素晴らしい補強をしたが、同時にルイス・ディアス、ダルウィン・ヌニェス、クアンサ、エリオットといった重要な選手を失った。彼らを補うだけのクオリティを持つ選手を迎えるのは簡単ではない。でもクラブは見事にやり遂げた。あとは僕たちがピッチ上で証明するだけだ。すべての大会で戦えるチームを作り上げる──それが僕らの目標です。」
キャプテンとして、そして一人の人間として
フィルジル・ファン・ダイクは、リバプールの魂を体現する男だ。
彼の言葉には、クラブへの誇り、ファンへの感謝、そして未来への責任が込められている。
ピッチの中でも外でも──
彼は“リバプールのキャプテン”であり続ける。
参照記事↓
コメント