リバプールで数々の栄光を手にしたアレックス・オックスレイド=チェンバレン。
だが、その裏には誰も知らない葛藤と悔しさがあった。
かつてのイングランド代表ミッドフィールダーは、出場機会を失った後の苦しみ、そしてユルゲン・クロップ監督の決断に打ちのめされた瞬間を赤裸々に語った。
6年で5つの主要タイトル、それでも心は満たされなかった
オックスレイド=チェンバレンは2017年夏、アーセナルからリバプールへ移籍金3500万ポンドで加入。
6年間で公式戦146試合に出場し、18ゴール・13アシストを記録した。
アンフィールドで彼が手にした栄光は数え切れない。
プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、クラブW杯、UEFAスーパーカップ、そしてリーグカップ――。
彼はチームの黄金期を共に戦った。
しかし、キャリアを通して幾度も襲った重傷が、その歩みを何度も止めた。
そして彼自身が最も輝いていた瞬間に、その夢は断ち切られる。
「もし勝っても、自分がいなければ痛い」──怪我人として迎えたCL決勝
「2018年にケガをした時、もちろんチームには勝ってほしい気持ちはあった。でも同時に、“もしチームが勝っても、自分がスカッドに入っていないなら辛い”っていう気持ちもあったんだ。」
「最初のチャンピオンズリーグ決勝はケガで出られなかった。準決勝も決勝も棒に振って、松葉杖でピッチに立った時は『これ(優勝メダル)を受け取っていいのかな? 本当に自分のものなの?』って思ってた。」
「でも次のチャンピオンズリーグ決勝では戻ってきて、スカッドに入った。『これは自分のだ』と思えた。リハビリして、試合にも何度か出て、ようやく自分の力で掴んだ感覚があった。それでも“やっぱりピッチでプレーしたかった”って気持ちは残るんだよ。」
CL制覇の喜びの裏で、彼の胸にはいつも“ピッチに立てなかった痛み”があった。
「FAカップ決勝の朝、スカッドから外された」──突然の通告
「あのFAカップの時は本当にショックだった。試合当日にスカッドから外されたんだ。そのシーズン、プレミアではスタメンで出ることは少なかったけど、FAカップでは全試合に出てた。だから“この大会が自分のチャンスだ”と思っていたのに、決勝の朝にベンチにも入らないと知らされて…本当に落ち込んだ。」
「もちろん、チームが勝って嬉しかったし、監督の決断は尊重してる。でも、自分としては“全部のラウンドを戦ってきたのに”という気持ちもあった。チームスポーツだから仕方ないけど、やっぱり“自分も決勝のピッチに立ちたかった”と思ってしまうんだ。」
それは2022年FAカップ決勝。
オックスレイド=チェンバレンはそれまで全試合に出場し、決勝こそ自身の舞台だと信じていた。
だが、当日の朝に伝えられた“メンバー外”という現実は、あまりに残酷だった。
「ACLをやる前が、キャリアのベストフォームだった」
「あの時、チャンピオンズリーグ準決勝(ローマ戦)の第1戦でケガをした。あのシーズン後半、自分はチームの原動力のひとりだった。12月から3月・4月にケガをするまでの間が、キャリアで一番調子が良かった。何も考えずにプレーできていたし、右サイドのトレント(アレクサンダー=アーノルド)やモー(サラー)との連携は最高だった。」
「ACLをやってからは1年離脱した。戻ってきた時も、すぐにチームに戻れるわけじゃなくて、6か月くらいはベンチや短い出場ばかり。それで“まだケガ明けなんだな”って印象を持たれてしまう。ヴァージル(ファン・ダイク)を見ても分かるけど、彼は身体的にも精神的にも規格外で、戻った瞬間からプレーできた。でも自分はそうはいかない。ミッドフィールダーには8人もいて、みんながポジションを争ってる。」
「6か月離れていたら、ポジションを取り戻すのは本当に難しい。戻ってきて“もう大丈夫だ、プレーできる”と思っていても、周りは20試合連続でプレーしてやっと“ケガは完全に治った”と認識してくれる。だから、復帰してもすぐには信頼を取り戻せなかった。」
かつて彼は、トレントとサラーの右サイドを支える“第三のエンジン”として機能していた。
だが、その充実の時間は、たった一度のアクシデントで終わりを告げた。
栄光の陰で消えなかった「悔しさ」
オックスレイド=チェンバレンは、リバプールで5つの主要タイトルを手にした。
だが、その輝かしいトロフィーの数々の裏には、
「ピッチに立てなかった後悔」と「自分が必要とされなかった痛み」が常にあった。
「チームの勝利は心から誇らしい。でも、プレーヤーとして“自分もその場に立ちたかった”という気持ちは消えない。」
彼はそう語る。
そして今、フリーとなった32歳の彼は再び立ち上がろうとしている。
何度も倒れ、何度も立ち上がった男。
オックスレイド=チェンバレンの物語は、まだ終わっていない。
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