イスタンブールの奇跡から2年、ミランが抱いていた“静かな炎”
かつてACミランの守備の要として黄金期を支えたアレッサンドロ・ネスタが、2007年チャンピオンズリーグ決勝「リバプール vs ミラン」について
イタリアのポッドキャスト『The BSMT Podcast』(ジャンルカ・ガッツォーリ司会)で
驚きの本音を明かした。
ネスタ「勝つには“勝ち方”を知らなければならない」
ネスタは番組内で、2005年イスタンブールでの悪夢と、その2年後のアテネでのリベンジをこう振り返っている。
「僕たちは強い集団だった。ひとつにまとまり、目標を決め、それを成し遂げた。再びリバプールと当たるのは“運命”だったんだ。そして彼らもそれを分かっていた。勝った時に見せびらかすような態度を取れば、いつか代償を払うことになる──実際、僕たちはやり返したし、彼らは負けた。」
「勝つ時には“勝ち方”を知らなければならない。僕たちはバスの中で既に勝利を感じていた。リバプールは浮かれすぎていたんだ。」
この発言は瞬く間に波紋を呼び、
サッカーファンの間で「イスタンブールの奇跡を“見せびらかし”と呼ぶのは筋違いだ」と物議を醸した。
あの歓喜は“見せびらかし”ではない──21年ぶりの奇跡
ネスタの言葉は挑発的だが、リバプールにとって2005年のイスタンブールは決して忘れられない夜だった。
前半を0-3で折り返したリバプールは、後半わずか6分間で同点に追いつき、延長・PK戦の末に劇的逆転勝利。
あの瞬間、世界中のサッカーファンが目撃したのは──
“奇跡”としか言いようのない、情熱と信念の結晶だった。
当時のチームは、プレミアリーグ5位。
国内では結果を出せず、21年ぶりの欧州制覇がかかった決勝。
ライバルのエヴァートンより下の順位に沈んでいた彼らにとって、イスタンブールでの勝利は“再生”そのものだった。
だからこそ、あの夜の歓喜は「見せびらかし」ではなく「魂の叫び」だった。
もし静かにトロフィーを掲げるだけだったなら──
それはリバプールではなかっただろう。
2007年アテネ──リバプールは内容で上回っていた
皮肉にも、2年後の再戦(2007年アテネ)では、内容面でリバプールがミランを完全に支配していた。
ジェラード、カイト、マスチェラーノらが攻守に走り、試合をコントロールしたのはリバプールだった。
しかし、決定機を逃した代償は重く、
ピルロのFKからインザーギが2得点を奪い、試合は2-1でミランが勝利。
ネスタが「バスの中で勝利を感じていた」と語る背景には、2005年の屈辱を胸に刻んだミランが“精神的に勝っていた”という自信があったのだろう。
若い世代に受け継がれた「ヨーロッパの記憶」
アテネで敗れたとはいえ、ラファ・ベニテス監督率いるあのチームが見せた戦いは、若い世代のサポーターに新たなヨーロッパの伝説を刻んだ。
70〜80年代の黄金期を知らない世代にとって、
2005年と2007年の2つの決勝は、リバプールというクラブが持つ永遠のDNA”を感じさせる物語となった。
勝ち方を知らなかったのではない。
勝つことの意味を、世界に教えたのがリバプールだった。
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