「止めることはできなかったが、最高の価格で売ることはできた」
元ローマのスポーツディレクターであるモンチが、2017年夏に行われたモハメド・サラーのリバプール移籍について語った。
当時、セビージャで辣腕を振るい“敏腕スカウト”として名を馳せていたモンチは、ローマのオーナー、ジェームズ・パロッタによって招かれた人物だった。
しかし、彼がスタディオ・オリンピコに到着した時には、すでにサラーの心はアンフィールド行きに決まっていたという。
サラーはすでにリバプール行きを決意していた
モンチは当時の状況をこう振り返る。
「私が着任した時点で、サラーはすでに売却がほぼ決まっていた。3300万ユーロ+ボーナス300万ユーロという条件だったが、最終的には5500万ユーロで売却することができた。彼はすでに“出て行く”という決意を固めていて、私たちにできたのは価格を少しでも上げることだけだった。」
彼によると、すでにローマとリバプールの間には基本合意が成立していたという。
それでもモンチはクラブに最大限の利益をもたらそうと交渉を続け、結果としてリバプールは当時のクラブ史上最高額となる3690万ポンドでサラーを獲得した。
「市場の狂乱前だった」——モンチの交渉哲学
モンチは、当時の移籍市場の文脈も強調する。
「あの移籍はデンベレ(バルセロナへ1億ポンド超で移籍)よりも前の出来事だった。まだ市場が“狂ったような高騰”に突入する前でね。だからこそ、サラーを5500万ユーロで売れたのは大きかった。彼を失うのは痛手だったが、当時のローマにとって必要な決断だったんだ。」
実際、2017年の夏は移籍市場が激変する直前のタイミングであり、その翌年以降はネイマール、デンベレ、エムバペらの超高額移籍が立て続けに起こることになる。
モンチはその潮流の“前夜”に、冷静な判断で取引を成立させた形だ。
「素晴らしいシーズンだった」——売却後も成果を残すローマ
「2018年は本当に素晴らしい年だった。サラー、リュディガー、パレデスといった主力を売却しなければならなかったが、それでもリーグ3位、そしてチャンピオンズリーグ準決勝まで進出した。あの成果は、クラブ全体の努力の賜物だった。」
実際、ローマは2017-18シーズンにおいてバルセロナを撃破し、奇跡のベスト4進出を果たしている。
モンチの手腕は批判と賛辞の両方を呼んだが、結果的にローマは財政を立て直し、競争力を維持した。
アンフィールドで輝き続ける“キング・サラー”
一方、サラーはリバプールでキャリアの頂点を極めることになる。
2017年の加入以来、プレミアリーグとチャンピオンズリーグを制覇し、今やクラブ歴代3位となる通算248ゴール(411試合)を記録。
まさにリバプールの象徴的存在となった。
日曜日には、アンフィールドで宿敵マンチェスター・ユナイテッド戦を迎える。
サラーはユナイテッド戦で過去13試合中11ゴールを挙げており、再びレッズを勝利に導くことが期待されている。
モンチの言葉からは、当時のクラブ事情と、サラーの強い意志の両方が伝わってくる。
“彼を止めることはできなかったが、最良の形で送り出すことはできた”——。
あの決断がなければ、いまのリバプールの黄金期はなかったかもしれない。
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