サー・ケニー・ダルグリッシュ— 48年越しの原点回帰、リバプールへの永遠の愛

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10月25日(土)、サー・ケニー・ダルグリッシュは、48年前にリバプールとの愛の物語が始まった“あの場所”に戻ってきた。

1977年、セルティックからリバプールへと移籍して以来、彼はクラブ史に名を刻む最重要人物のひとりとなった。

「キング」の始まりと、街がくれた温かい歓迎

74歳となったスコットランドの伝説は、週末にリバプールONEのODEONで行われた新作ドキュメンタリーのプレミア上映に出席。

監督は、マラドーナ、セナ、ワインハウスといった偉人を描いてきたアシフ・カパディアだ。

「ここ(現在のODEON)は、当時ホリデイ・インだった。僕たちはこのホテルで数カ月を過ごし、最初の家が見つかるまでお世話になった。マリーナ(妻)と2人の子どもを連れてやって来た僕らを、街の人たちは本当に温かく迎えてくれた。誰もが親切で、ある人はベビーシッターにまでなってくれた。本当に居心地のいい場所だった。」

彼にとってリバプールは、グラスゴーから200マイル以上離れていながらも、まるで“帰ってきた場所”のようだったという。

「リバプールとグラスゴーは本当に似ている。人の気質、ユーモアのセンス、助け合いの精神。みんな冗談を言い合いながら、誰かを助けるためにいつもそこにいる。両方の街には、信じられないほど多くの共通点があるんだ。」

15歳の少年が抱いた夢と、運命の移籍

実は、ダルグリッシュがリバプールに加入するまでには長い道のりがあった。

15歳のとき、彼は一度アンフィールドでトライアルを受けていたが、「グラスゴーから遠すぎる」と感じて断っている。

その後、ボブ・ペイズリーの誘いを受け、セルティックで全てを成し遂げたと感じた22歳の彼は移籍を決意。

だが、恩師ジョック・ステインが交通事故で重傷を負ったため、敬意を示して残留を選んだ。

「マリーナに『今は行けない。あの人には恩があるから、元気になるまで待つ』と言ったんだ。

2年後にようやく『ボス、やっぱり行きたい』と伝えた。」

そして1977年、ローマでのヨーロピアンカップ決勝(リバプールが優勝)を見届けた彼は、こう思った。

「もし移籍するなら、リバプールしかないと思った。幸運にもそうなった。セルティックとリバプールという、当時イギリスで最も成功した2つのクラブでプレーできたのは本当に幸せだ。少しでも貢献できていたなら嬉しい。」

謙虚な“王様”が語る、成功の本質

翌年、彼のゴールでリバプールは欧州王者の座を守り抜く。

その華麗なプレーは今もアンフィールド周辺のパブで語り継がれ、若い世代のファンは“FIFAで知った伝説”として名前を覚えている。

「現代の誰に自分を重ねるか?」という質問には、

「そんな称号を与えるなんて失礼だよ。彼らにはまだ早い」と笑って答えた。「チームとして成功するためには、全員が自分の役割を全うしなきゃいけない。僕ひとりではゴールを守ることもできなかった。でも、アシストやゴールはできた。成功とはチーム全員の力なんだ。」

ヒルズボロ、そして「正義のために」

彼がリバプールの“魂”として尊敬され続ける最大の理由は、ピッチ外の行動にある。

1989年のヒルズボロの悲劇で97人のサポーターが犠牲になった後、彼は常に遺族とともに正義を求め続けた。

その功績が認められ、2016年に「リバプール市民栄誉賞(Freedom of the City)」を受賞。

「サッカーの話を振り返るのは簡単だったが、ヒルズボロについてはやはり辛かった。でも、アシフ(監督)の描き方は本当に見事だった。」

彼自身は「特別なことはしていない。ただ、人として当然のことをしただけ」と語る。

それこそがリバプールとグラスゴーに共通する、“思いやりの精神”そのものだった。

50年経っても変わらぬリバプール愛

いまも彼はサウスポートに暮らし、クラブを支え続けている。

フロリアン・ヴィルツ、アレクサンダー・イサクらを加えた今季のチームについても、温かく見守っている。

「素晴らしい選手がいる。新しい環境に馴染むには時間が必要だ。僕のときは一人だけの新加入だったからすぐに溶け込めたけど、彼らもきっと頑張ってくれるさ。」

そして最後には、永遠のライバルであるアレックス・ファーガソンとの“微笑ましいエピソード”を語って笑いを誘った。

「この前のユナイテッド戦で、ファギーが僕のチョコボタンを勝手に取ったんだ。まったくスキャンダラスだよ(笑)。幸い、もう一袋あったけどね。」

リバプールとケニー・ダルグリッシュの関係は、単なるクラブとレジェンドの絆ではない。

それは“家族”のような愛情であり、街の魂そのものだ。

彼が語る「人の温かさ」「助け合う心」こそが、リバプールという街を世界一特別な場所にしている。

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