「イスタンブールの奇跡」がすべての始まり──ルイス・フェルナンド・イウベル、リバプールで叶えた20年越しの夢

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ルイス・フェルナンド・イウベルのリバプールへの旅は、少なくとも“心の中では”20年前に始まっていた。

当時、ブラジル・クリチバに暮らしていた10代の少年は、ある“情熱”と“夢”、そして“最終目標”を胸に抱いていた。

その情熱とは――サッカー。

それは、彼にサッカーの楽しさを教えてくれた最愛の父から受け継いだものだった。

夢は――監督になること。

そして最終目標は――ヨーロッパで働くこと。

中でも2005年5月、アタテュルク・スタジアムで起きた「イスタンブールの奇跡」に魅了されて以来、心は一つのクラブに向かっていた。

■ 「イスタンブールの奇跡」から始まったリバプールへの情熱

「僕は“イスタンブールの奇跡”以来ずっとリバプールのサポーターなんです。だからこのクラブには特別な親しみを感じています。」

そう語るのは、現在36歳のルイス・フェルナンド・イウベル。

2024年9月、彼はリバプールFCの個人育成担当コーチ(Individual Development Lead Coach)として正式に加入した。

「ここでの生活は本当に大好きです。毎分毎秒が特別で、世界で最も偉大なクラブで働けることを誇りに思っています。

2007年に初めてコーチングライセンスを取ってから約20年。ここに至るまでの道のりは、すべてこの瞬間のためだったと思えるんです。」

「子どもの頃からずっとサッカー指導者になるのが夢でした。だから、いまこの場所にいられるのは自分だけでなく、家族にとっても、妻にとっても、そして2年前に亡くなった父にとっても大きな誇りです。

父は天国で、きっと“レッド”になって僕のことを見てくれているはずです。」

■ ブラジルとドイツ、二つのルーツを持つ指導者

若くして豊富な経験を持つイウベルは、UEFA Aライセンス、UEFA A Elite Youthライセンス、そしてCONMEBOL Proライセンスを保持する。

リバプール加入前は、ブラジルの名門アトレチコ・ミネイロでアシスタントヘッドコーチを務めていた。

ブラジルとドイツの二重国籍を持つ彼は、これまでにバイーア、セアラー、コリチーバ、ジュベントゥージ、ポンチ・プレッタ、ヴァスコ・ダ・ガマなどで指導を経験。

さらに、2024年にはクイアバを率いてマトグロッソ州選手権を制覇した。

「ブラジルでも大きなクラブで働いてきましたが、リバプールに来るとそのスケールの違いを痛感します。トレーニング施設の規模、クラブの組織力――すべてが別次元です。でも、それは僕を怖がらせるものではなく、むしろモチベーションです。このエンブレムを胸に付けるたびに、心から誇りを感じます。」

■ 「プロフェッショナリズムに惹かれた」──リバプールとの出会い

「ヨーロッパで働くことは、ずっとプロとしての目標でした。

妻と僕は“いつかヨーロッパで暮らす”という夢も持っていたんです。」

そんな中で、リバプールがオンラインでコーチ募集を出しているのを見つけたイウベルは、迷わず応募した。

「応募してからの面接は非常に厳格でした。

その時点で、このクラブのプロフェッショナリズムの高さを感じましたね。

伝統や規模だけじゃなく、細部までこだわる姿勢――その誠実さに惹かれました。」

「AXAトレーニングセンターに来て感じたのは、“家族のような温かさ”があるということです。

多くの大クラブでは、組織が大きくなるほど人間味が失われることがあります。

でもここでは違う。

スタッフ全員が本当に親切で、最初の日から“チームの一員”として迎え入れてくれました。

プロ意識と温かさが共存している――これ以上の環境はありません。」

「リバプールという街自体も大好きです。人々が本当に温かい。

もちろん天気にはまだ慣れてませんが(笑)、この街の雰囲気にはすっかり魅了されています。」

■ 個人育成担当コーチの役割とは

では、彼の役割――個人育成担当コーチ(Individual Development Lead Coach)とは具体的にどんな仕事なのか。

「僕の仕事は、将来性のある選手たちを、あらゆる面で成長させることです。」

「トップチームとU21チームの間をつなぐ架け橋として、日々のトレーニングを通して選手の個人能力を伸ばす。

ローンに出ている選手も含め、全員がいつトップチームに呼ばれても活躍できるように準備を整えるのが僕の使命です。」

「もちろんこれは僕ひとりの仕事ではありません。

アカデミーを率いるアレックス・イングルトープをはじめ、U21のロブ・ペイジ、ジェイ・スピアリングら素晴らしいコーチ陣と日々連携しています。」

「選手ひとりひとりに合わせた“個別成長プラン”を作り、進捗を細かく追跡して、アルネ・スロット監督の求めるレベルに近づけていく。

それが僕の役割です。」

「ただ、トップチームへの道がなければ、どんなに育成が上手くいっても意味がない。

だからスロット監督がリオ・ングモハやトレイ・ナイオニのような若手にチャンスを与える姿を見て、“自分の仕事の意義”を強く実感しました。」

■ 「監督としての経験が、選手の理解を深めてくれる」

イウベルはブラジル・セリエAでトップチームの監督を務めた経験もある。

その経験が、若手育成の現場で大いに活きている。

「トップレベルの現場で何が求められるか、監督としての経験があるから理解できます。

監督が若手に何を望むのかを知っているからこそ、選手の発達段階に応じて“適切な橋渡し”ができる。」

「どのタイミングで声をかけるか、どの段階で戦術を詰め込みすぎないか――それを見極めることが大事なんです。

その感覚は経験によって培われました。」

「シプケ・フルショフ、ジョバンニ・ファン・ブロンクホルスト、アーロン・ブリッグス、シャビ・バレロ、ルーベン・ピータース、ヤンセン・モレノ、そしてスロット監督――

みんなが本当に温かく僕を受け入れてくれました。

そのおかげで、すぐにチームの一員として溶け込むことができたんです。」

■ 父への想い、そして“ブラジル人指導者”としての誇り

「僕は子どもの頃からチームメイトをまとめるタイプで、サッカーの歴史を学ぶのも大好きでした。

2005年からはプレミアリーグを毎週追いかけていて、どのチームが優勝したかも全部覚えています。

ウリエ監督時代のチーム、ラファ・ベニテスの時代、ブレンダン・ロジャーズ、ユルゲン・クロップ――すべてのリバプールを見てきました。」

「ずっと思ってきたのは、“他の誰かができるなら、なぜ自分にできないのか?”ということ。

努力して、忍耐強く、情熱を持ち続ければ夢は叶う。

父もそう教えてくれました。」

「父は昔、ベートーヴェンの話をしてくれたんです。

彼は耳が聞こえなくなっても“交響曲第9番”を作り上げた。

それほどの情熱と知識があれば、限界を超えられる。

僕もサッカーに対して同じように向き合いたい。」

「父のおかげでドイツ国籍を取得できたのですが、その認可が下りたのは、なんと父が亡くなる前日でした。

だから今、ヨーロッパで働いていることは、僕にとって父への恩返しでもあるんです。」

「僕は父ととても深い絆で結ばれていました。

彼と一緒にクリチバのスタジアムでサッカーを観た時間が、僕を“サッカー人”にしたんです。」

「そして今は、ブラジル人指導者として世界にその実力を示したい。

ブラジルには素晴らしい監督がたくさんいます。

その一人として、ここで結果を残したいんです。」

「僕はいま、リバプール・フットボールクラブの一員です。

そう言えることを、心の底から誇りに思います。」

イウベルの指導で今後トップチームで活躍する若手選手が1人でも多く出てる来ることに期待している。

参照記事↓

https://www.liverpoolfc.com/news/behind-badge-brazilian-coach-who-living-his-dream-liverpool

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