今週末、リバプールはマンチェスター・シティとの大一番に挑む。
その舞台裏では、かつてアンフィールドで6年間にわたりユルゲン・クロップを支えた男──ペップ・ラインダースが、
今度はペップ・グアルディオラの右腕として、古巣と相まみえる。
グアルディオラはこの試合で監督通算1000試合目という節目を迎える。
だが、リバプールファンにとって注目すべきはもうひとつ。
“かつてクロップの片腕だったペップ”が、“ペップ・グアルディオラの隣に立つ”という、運命めいた再会だ。
クロップとの旅を終え、監督挑戦──そしてまさかの「シティ入り」
ラインダースはクロップ体制の6年間を通じて、数々のトロフィー獲得に貢献した。
だが、2024年夏、クロップと共にアンフィールドを去り、新たな道を歩み始める。
オーストリアのレッドブル・ザルツブルクで監督として独り立ちしたが、結果は芳しくなくわずか半年で解任。
それでも彼は以前から「自分のチームを率いる夢」を公言しており、誰もが再び監督としての挑戦を予想していた。
しかし、その彼が選んだのは意外にも再び“ナンバー2”の道。
しかも、行き先はリバプール最大のライバル──マンチェスター・シティだった。
この決断にはサッカー界も驚きを隠せなかったが、
かつて彼と共にリバプールで指導したゲイリー・マカリスターは、“驚きはなかった”と語る。
マカリスター:「ペップがもう一人のペップを選んでも不思議じゃない」
「ペップ(グアルディオラ)がもう一人のペップ(ラインダース)を選んでも、何の不思議もないさ。ピッチ上でのトレーニングは本当に素晴らしい。自分が見てきた中でも、彼は最高レベルのコーチだ。」
そう語るのは、リバプールOBのゲイリー・マカリスター。
彼は2015年夏にブレンダン・ロジャーズのもとでファーストチームコーチを務め、
同時期にラインダースがアカデミーから昇格してきた現場をよく知る人物だ。
「彼は本当に有能で、知的な監督たちの下で多くを学んできた。だから驚きはなかった。よく考えれば、グアルディオラの時代に最も彼を苦しめたのはユルゲン(クロップ)であり、リバプールこそがシティを本気で追い詰めたチームだったからね。ペップ(グアルディオラ)も、ユルゲンのチームから多くを学んでいるはずだ。」
「彼は純粋なフットボール人」──リバプール時代を知る男の証言
「彼はアカデミー出身で、ブレンダンが彼を昇格させた。初めて会った時から“純粋なフットボール人”という印象だった。トレーニングセッションは非常に緻密で、観ていて本当に面白かった。」
「自分はどちらかというと“元選手”として現場を見ていたが、ブレンダンとペップのやり方には共通点があった。どちらも“魅力的なフットボール”を追い求めていたんだ。」
マカリスターは、監督としての挑戦に失敗したラインダースの選択を理解している。
「彼はすでに何度か監督に挑戦しているけど、コーチと監督はまったく別の仕事だ。長年コーチとして働いていると、“次は監督を”と思うのは自然なこと。でも、それはまったく違う世界なんだ。ペップ(ラインダース)は、自分の真価が“コーチ”にあると気づいたんだと思う。」
「リバプールに不利? 今の時代にそんなことはない」
ラインダースがライバル・シティの内部にいることで、リバプールが戦術的に不利になるのでは?
そうした声もあるが、マカリスターはきっぱりと否定する。
「今のフットボールでは、チーム分析の規模が膨大だ。相手選手や戦術に“知らないこと”なんて、もうほとんどない。どのクラブもすべてを把握しているんだ。」
「アルネ(スロット)は新しい要素を導入しようとしているし、シティがリバプールの変化を見抜いているように、リバプールもシティの戦術的変化を読み取っている。」
「今季のシティは、得点者が広く分散しているのが特徴だ。ボールを前に運ぶテンポも少し上がっている。ただ、これはプレミアリーグ全体の傾向だね。チームが4-4-2に切り替える場面が増えていて、ロングボールやセットプレーも増加している。」
「ここ3年で“セットプレー専門コーチ”が一般的になった。以前のようにポゼッションを重視して完璧な形を作るより、今は“早くボックスにボールを入れる”スタイルが主流だ。そしてその象徴がハーランドだ。彼はすでに14〜15ゴールを挙げているが、チーム内で次に多い選手は1〜2点。つまり、明確に彼を狙って攻撃しているということだね。」
ジェラードとの絆、そして次なるステップ
マカリスター自身のキャリアは、2022年10月にアストン・ヴィラを退任して以降止まったままだ。
スティーヴン・ジェラードのアシスタントとしてレンジャーズ、ヴィラで共に戦ったが、サウジ行きの際には同行を断った。
「レンジャーズ復帰の話も出たけど、自分には声はかからなかった。もちろんスティーヴンとは今も頻繁に連絡を取っているよ。まだ正式な話が出る段階ではなかっただけだ。」
「レンジャーズでは本当に素晴らしい時間を過ごした。スティーヴンにとって初めての監督業だったけど、完璧にやり遂げたと思う。ヴィラでは結果が出なかったけど、それもフットボールだ。サウジからの誘いはあったけど、家族のために断った。でも、“もう一度彼と組む可能性”を否定するつもりはないよ。」
「彼の目を見ればわかる。
まだ情熱を失っていない。
タイミングさえ合えば、必ず戻ってくると思う。」
“ペップ vs ペップ”──そしてアンフィールドの記憶が交差する日
今週末、エティハド・スタジアムのタッチラインでは、
かつてリバプールを栄光に導いたペップ・ラインダースと、その宿敵ペップ・グアルディオラが肩を並べる。
リバプールとマンチェスター・シティ──
この時代を象徴する二つのチームが再び激突する中で、
かつての「赤の戦略家」は今、“青の参謀”としてその知恵を注ぐ。
彼が古巣に見せるのは、恩返しか、それとも再挑戦の証か。
運命の再会が、また新たなドラマを生み出そうとしている。
参照記事↓

コメント