リヴァプールの中盤を支えるドミニク・ソボスライ。
そのキャリアは、ある“1本の電話”から大きく動き出した。
ユルゲン・クロップからの着信に気づかず、海で遊んでいたあの日。
そこから始まったアンフィールドでの物語は、今や「8番」を背負う存在へと続いている。
しかし彼は、ただの“ジェラードの後継者”ではない。
父となり、チームを支え、そして夢を追い続ける――
これは、ソボスライが語った「今」と「未来」のリアルだ。
■ 電話に出られなかった移籍劇
RBライプツィヒで契約解除条項の期限が迫る中、リヴァプールがソボスライを6000万ポンドで獲得してから、もうすぐ3年が経とうとしている。
あの移籍は一気に進んだ電撃的なものだったが、新指揮官ユルゲン・クロップとの最初のやり取りは、決して理想的なスタートではなかった。
「めちゃくちゃ変な感じだったよ」と、ソボスライはインタビューで語る。
「いつも新しい契約が近づいたり、何かが変わりそうなときは、エージェントが最後の最後まで教えてくれないんだ。だから、決断しないといけないタイミングになるまで何も知らない。本当にあっという間だった。『興味を持っている』と言われて、『じゃあ行こう』ってなって、ユルゲンから電話が来て、それでサインした。でも実は、最初の電話は出られなかったんだ。彼は車の中にいたけど、すぐに折り返して謝った。最初に出られなかったことを謝ったら、彼は全然気にしてなかったよ。友達と休暇中だったのを覚えてる。その時エージェントから電話があって、『2〜3時間後にユルゲンから電話が来るから出られるようにしておけ』って言われた。でもそれを忘れてて、海に入ってたんだ。そしたら友達が走ってきて『電話鳴ってる!ユルゲンだ!』って言ってきてさ(笑)急いで戻って折り返して、『忘れてた、ごめん』って言った。それから話し始めて、彼は“君に来てほしい”って言ってくれて、俺は“行く準備はできてる”って答えた」
■ リヴァプールというクラブの重み
メディカルのためにマージーサイドへ向かう飛行機の中で『You’ll Never Walk Alone』を何度も聴きながら、ソボスライはアンフィールドでデビューする前から、クラブの文化にできる限り深く入り込もうと決意していた。
「リヴァプールがどれだけ大きなクラブかは知ってた。でも実際に中に入ると、“リヴァプールの選手であること”の意味を本当に理解するんだ。信じられなかったよ。背番号を選ばないといけなくて、ナビ(ケイタ)がもういないって知ってたから、8番が空いてた。だからこれは簡単な選択だった。それでトレーニング施設に入って、すべての環境やここにいる選手たちを見たとき、本当に夢が叶ったって思ったよ」
■ “ジェラードの8番”ではなく、自分の物語へ
多くの選手、特に高額移籍の選手なら8番を背負うことにプレッシャーを感じて避けるかもしれない。
だがソボスライは、スティーブン・ジェラードとそのアンフィールドでの伝説に惹かれてこの番号を選んだ。
そして今季の印象的なパフォーマンスによって、両者を比較する声も何度か上がっているが、彼は“ジェラードの再現”を目指しているわけではない。
「すごく大きな賛辞だと思うよ」と語る。
「でも何度も言ってるけど、自分のストーリーを作りたいんだ。チームとして苦しい時もあるけど、常にピッチで全てを出そうとしている。そして今季はピッチ外でも、新加入の選手たちを助けるようにしてる。違うリーグから来た選手たちをね。自分が新加入だった時の気持ちは分かってるし、プレミアリーグ、特にリヴァプールに来ることがどれだけ大変かも分かってる。ここでは常にタイトルを期待されるからね。(リーダーになれているかは)そうであってほしいけど、それは他の人に聞いてほしい。ただ自分はピッチ内外でベストを尽くして、みんなをまとめようとしてる。ピッチでのプレーでリーダーシップを示すこと、それが一番大事だと思ってる。今季をいい形で変えられたらいいね」
■ 苦しいシーズンでも証明した価値
厳しいシーズンの中で、ソボスライは12ゴール(その多くが見事なゴール)と8アシストを記録。
右サイドバックでプレーすることも多かった中でのこの数字は、彼のパフォーマンスの高さを示している。
その安定した活躍は、2月にモハメド・サラーが彼を「世界最高クラスの選手の一人」と称賛するほどだった。
「リヴァプール史上最高の選手の一人にそう言ってもらえるのは本当に嬉しい。彼とは仲がいいけど、仲がいいから言ってるわけじゃないって分かってる。本心で言ってくれてるんだ。本当に感謝してるよ」
■ ブダペストでの夢
プレミアリーグで10敗を喫し、来季のチャンピオンズリーグ出場権争いは厳しい状況だが、4月初旬の時点でリヴァプールはまだ3つの大会で戦っている。
FAカップではマンチェスター・シティ、そしてチャンピオンズリーグではパリ・サンジェルマンとの大一番が控えている。
ソボスライは、ハンガリーの首都ブダペストでチャンピオンズリーグを制するという夢についてこう語る。
「話すのはあまり好きじゃないけど、考えないわけにはいかないよ。時々頭の中で想像して、妻ともどうなるか話したりする。でも正直想像できない。ブダペストで決勝を戦うなんて。それが毎日努力している理由なんだ。キャリア最大の夢はチャンピオンズリーグ優勝だ。もしあそこで勝てるなら、今すぐにでもサインするよ。何も諦めてない。ただ現実的に見ているだけだ。残り2つのタイトルを狙いにいく。最終的に何かを手にできたらいいね」
■ 父親になって変わった価値観
ソボスライは現在、妻と昨年8月に生まれた娘とともにマージーサイドで生活している。
「かなり変わったよ。試合後にうまくいかなかったときはすごく怒ってた。でも娘が生まれてからは、2分くらいで落ち着くようになった。そして彼女のことを考えて、本当に大切なものが何かに気づくんだ」
■ リヴァプールでの未来
ここ数ヶ月、ソボスライの将来についての議論も続いている。
クラブは彼の代理人であるEM Sportsと、新契約に向けた交渉を続けている。
本人はこの話題を深く語ることは避けたが、長期的にこの地に残ることを望んでいるとみられている。
「ここにいるのが大好きなんだ。家族も幸せだし、クラブも、ファンも大好き。このクラブでプレーするのが好き。それだけだよ」
リヴァプールでのキャリア、父としての人生、そしてチャンピオンズリーグという夢。
すべてが重なり合う今、ソボスライは確実に“チームの中心”へと近づいている。
ジェラードの影を追うのではなく、
自分自身のストーリーを刻むために。
そしてその物語の先にあるのは――
ブダペストで掲げる、欧州制覇の瞬間かもしれない。
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