アンディ・ロバートソンは、最初からスターだったわけじゃない。
800万ポンド。
控え。
守備への不信感。
そして何より――
“自分が本当にリヴァプールで通用するのか分からない”という恐怖。
今ではプレミアリーグ史上最高クラスの左サイドバックとして語られる男も、当時は不安でいっぱいだった。
クロップに呼ばれたわけでもない。
自信満々だったわけでもない。
むしろ逆だ。
「怖かった」
「自分が十分か分からなかった」
それでも彼は、監督室のドアを叩いた。
そして、その日からロバートソンの人生は変わり始める。
日曜日、ブレントフォード戦でアンフィールドへ別れを告げるロバートソンはこう振り返る。
「めちゃくちゃ怖かったよ。本当にね。正直、もう何か言わなきゃいけないところまで来ていたんだ。自分はこれまで、一度も“自信満々”だったことはない。常に不安を感じていた。でも、どこへ行っても、とにかくプレーしたかった。10月になって、あの会話をした。対立的なものじゃなかったし、監督を責めたわけでもない。最初に聞いたのは、“あなたのチームに入るために、自分は何をすればいいですか?”だった。監督は、“そんなの obvious(明白)だろ?”って感じだった。3月か4月頃に一度話していた内容だったからね。でも自分はその時の話を少し忘れていて、改めて聞けたのは良かった。次の日、こう思ったんだ。『監督に言われたことを全部やろう』って。『もし失敗するなら、それはそれでいい』ってね。自分が十分に良い選手なのか分からなかった。タイトルを獲れるかも分からなかった。でも、自分に誓ったんだ。『毎日100%を出し切ろう』って。それが、自分が一番誇りに思っていることなんだ。でも、あの会話のあと、全てが噛み合い始めた。“自分はリヴァプールの選手なんだ。そして、この場所で成功するために全てを尽くす”という姿勢になった。あの日以降、自分と監督はもう後ろを振り返ることはなかった」
ロバートソンはその後、チャンピオンズリーグ、プレミアリーグ2回、FAカップ、リーグカップ2回、クラブW杯、UEFAスーパーカップなど数々のタイトルを獲得した。
しかし彼の退団は、偉大な“クロップ時代”の終焉を象徴するものでもある。
モハメド・サラーも退団予定であり、アリソン・ベッカーやジョー・ゴメスの将来も不透明だ。
そしてブレントフォード戦では、元リヴァプール主将でありロバートソンの親友の一人、ジョーダン・ヘンダーソンも相手チームの一員としてアンフィールドへ戻ってくる。
ヘンダーソンは2023年、サウジ・プロリーグへの移籍という失敗に終わった挑戦のため、突然クラブを去っていた。
そのため今回、改めてファンへ別れを告げる機会となる。
また、元GKクィービーン・ケレハーもブレントフォードの一員として戻ってくる。
「自分だけが別れの主役じゃなくて良かったよ。正直、それが少し心配だったんだ」
スコットランド代表主将はそう笑った。
「エジプト人の友達(サラー)が、少しは注目を持っていってくれるだろうしね。自分はその陰に隠れていられるよ。もちろん、お別れは感情的になると思う。でも本当に、ヘンドがこのクラブのためにやってきたこと、そしてタイトルへ導いてくれたことに対して、特別な拍手を受けてほしい」
32歳のロバートソンは、ミロシュ・ケルケズに定位置を奪われたことで退団を決断した。
また、新契約交渉も双方の期待が一致せず終了している。
「9年間ここでプレーできたことを幸せに思っている。後悔もないし、恨みもない。このクラブは特別なんだ。だから離れるのは本当に難しい。でも、別の場所で幸せを見つけることも大切なんだ。それは、多くの人たちが証明してきたことでもある。中には、“まだリヴァプールにもっと与えられる”と感じながら去った選手もいると思う。でも自分は、この9年間を振り返って、“全てを出し切った”と胸を張って言える」
アンディ・ロバートソンの物語が、多くの人の心を打つ理由。
それは、
彼が“完璧な天才”ではなかったからだ。
不安もあった。
自信もなかった。
通用する保証もなかった。
それでも、逃げなかった。
「もし失敗するなら、それでもいい」
そう覚悟を決め、
毎日100%を出し続けた。
その積み重ねが、
世界最高クラスの左SBを生んだ。
だからこそロバートソンは、
リヴァプールファンにとって“特別”なんだ。
華やかな才能だけじゃない。
努力。
根性。
覚悟。
その全てが、“リヴァプールらしさ”そのものだったから。
アンフィールドを去る今、
彼は胸を張って言える。
「全てを出し切った」と。
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