アンドニ・イラオラ時代が、ついに始まった。
リヴァプールの新ヘッドコーチとして初めてクラブメディアの前に姿を見せた43歳のスペイン人監督は、自身のフットボール哲学、アンフィールドへの憧れ、そしてクラブに対する責任について率直に語った。
「リヴァプールはリヴァプールだ」
そう語るイラオラの言葉からは、このクラブの歴史と重みを理解した上で挑戦に臨む覚悟が伝わってくる。
一方で彼は、強度、アグレッシブさ、組織力という自身のスタイルを失うつもりはないことも明言した。
クラブが新たな時代へ進もうとしている今、その第一声には多くのリヴァプールファンが求めていたメッセージが詰まっていた。
――アンドニ、リヴァプールへようこそ。今、このリヴァプールのトラックスーツを着て座っている気持ちは?
「本当にワクワクしているよ。もちろんリヴァプールがどれだけ大きなクラブかは知っていた。世界最大級のクラブの一つだからね。でも実際に内部へ入ってみて、このクラブを少しずつ理解し始めると、改めて特別なクラブだと感じる。それはサッカーだけじゃない。街の人々が平日ですらクラブのことを考えている。サッカー好きもそうじゃない人も、このクラブに情熱を注いでいる。選手時代にアスレティック・ビルバオで経験した感覚に少し似ている部分もある。だから、その文化を内側から体験できることが楽しみなんだ。」
――この街ではリヴァプールFCが“生活そのもの”です。その部分も魅力だった?
「もちろんだ。このクラブは人々にとって本当に大切な存在なんだ。サッカーは結局、感情のスポーツだからね。これは特権でもあるけど、大きな責任でもある。多くの人々が、自分たちを正しく代表してほしいと思っている。だから選手たちも含めて、ファンがチームの価値観やプレーに共感できるようにしたい。」
――フットボール面で惹かれた理由は?
「正直、リヴァプールに惹かれる理由なんてたくさん必要ない。リヴァプールだからね。スタジアム。サポーター。クラブの歴史。選手たち。そしてトップレベルの選手を指導し、タイトルを争える環境。これ以上魅力的な仕事なんてなかなかないよ。」
――リチャード・ヒューズとは旧知の仲です。
「もちろん助けになった。ボーンマスで1年間一緒に働いたからね。でも今回の決断は、ヒューズというよりリヴァプールそのものが理由だ。今はクラブをもっと理解したい。ピッチ外で何が起きているのかも知りたい。選手たちと本格的に仕事を始めるまで約1か月ある。その時間を有効に使いたい。」
――ワールドカップがあることで若手を見る機会も増えそうですね。
「そう思う。代表組はワールドカップでプレッシャーの中を戦ったあとだから、休養が必要だし、それに値する。その間、若手をじっくり見られる。アカデミーの選手。レンタルから戻る選手。彼らはプレシーズン前半やアメリカツアーで重要な役割を果たすだろう。その期間は私たちにとって非常に価値のあるものになる。」
――ファンはあなたのスタイルを知りたがっています。
「プレミアリーグで3年間やってきたから、多くの人はボーンマスの試合を見ていると思う。もちろんリヴァプールでは変えるべき部分もある。でも失いたくないものもある。強度。アグレッシブさ。組織力。そういったものは常に自分のチームに持たせたい。選手に合わせる必要はあるけど、リヴァプールが長年大切にしてきた価値観とも合致していると思う。」
――アンフィールドで監督としてベンチに立つ瞬間を想像していますか?
「もちろんだ。まだボーンマス時代のことを覚えている。開幕戦でキエーザに終了間際に決められた試合だ。2-2で何か持ち帰れるかもしれないと思っていた。でも彼が決めて、スタジアムが爆発した。本当に狂気だったよ(笑)。今度は反対側からその景色を味わいたい。ただ最初は自分自身を証明しなければならない。このクラブに属する資格を勝ち取らなければいけない。できるだけ早くそれを成し遂げたい。」
――アンフィールドでゴールを祝う瞬間は特別でしょうね。
「サッカーは感情だ。人生では比較的冷静で理性的な方だと思う。でも試合になると違う。ゴールを祝う瞬間には何かが湧き上がる。選手にも、サポーターにも、監督にも必要なエネルギーだ。そして、その場所としてアンフィールド以上の場所はない。」
――リヴァプールでの目標は?
「リヴァプールはトップ選手を指導する機会を与えてくれる。そしてトップ選手がいればタイトルを争える。タイトルを勝ち取れる。もちろん全てを約束することはできない。でも、自分がどこへ来たのかは理解している。何を求められているかも分かっている。その挑戦を受ける準備はできている。」
――世界中のリヴァプールファンへメッセージを。
「多くは求めない。彼らがどんな人たちかは知っている。私が言いたいのは一つだけだ。自分も皆の一員になりたい。その資格を勝ち取りたい。そして一緒に喜びを分かち合いたい。」
――最後に。この日はあなたにとってどんな意味がありますか?
「これは自分一人の日じゃない。人は人生で出会った人たちの影響によって作られる。私はサン・セバスティアン郊外の小さな労働者の町で育った。選手になるまでの旅があった。キプロスから監督キャリアを始めた。下部リーグを経験し、昇格し、ラ・リーガへ行き、プレミアリーグへ来た。そして今、ここへたどり着いた。その過程では本当に多くの人に助けられた。だから今、祝福のメッセージを受け取るたびに、その人たちの顔が浮かぶ。彼らがいてくれたから今がある。だから今度は彼らに見せたいんだ。「みんなでここまで来たんだ」ってね。そして一緒に、この瞬間を楽しみたい。」
イラオラはこのインタビューで派手な約束をしなかった。
タイトル獲得も。成功も。未来も。
何ひとつ保証しなかった。
しかし、その代わりに彼はこう語った。
「私はこのクラブが何を求めているか理解している。そして、その挑戦を受ける準備ができている」
リヴァプールの監督に必要なのは、言葉ではなく結果だ。
だが同時に、アンフィールドの人々は戦う覚悟を持つ者を愛する。
強度。情熱。アグレッシブさ。
それはクロップ時代に築かれたDNAでもある。
イラオラが本当にそのDNAを受け継ぎ、再びリヴァプールを頂点へ導けるのか。
その答えはこれから先の数か月で明らかになる。
ただ一つ確かなのは――
アンドニ・イラオラは、リヴァプールという世界最大級の挑戦から逃げなかった。
そして今、その物語が始まろうとしている。
参照↓

コメント