アルネ・スロットは、ただ別れを惜しんでいたわけではない。
彼は理解していた。
モハメド・サラーとアンディ・ロバートソンが、このクラブに何を残したのかを。
プレミアリーグ。
チャンピオンズリーグ。
数え切れないほどの名勝負。
だが、それ以上に彼らが築いたのは、“リヴァプールの基準”だった。
走り続けること。
勝利を求め続けること。
苦しい時こそ現れること。
スロットは、その全てを間近で見てきた。
そして今、去りゆく2人へ最大級の敬意を送る。
「彼らには、1回の優勝では足りなかった」と。
Liverpoolfc.comとのインタビューで、スロットは2人と共に過ごした時間を振り返り、その人間性と選手としての偉大さを語った。
まず、ロボ(ロバートソン)について。リヴァプールへ来る前、彼にはどんな印象を持っていましたか?
「たくさん知っていたよ。本当にたくさんね。自分はユルゲン(クロップ)時代のリヴァプールをよく見ていたから。サッカーが好きなら、リヴァプールを見るのは当然だった。素晴らしいサッカーをしていたからね。彼のエネルギー、運動量、何度もオーバーラップを繰り返す姿はよく知っていた。そして実際に一緒に仕事を始めると、ピッチ外でも同じエネルギーを感じたよ。本当に好かれるタイプの人間なんだ。そしてピッチでは、年々さらに良くなっていったと思う。以前は上下動がメインのSBだったけど、後方から落ち着いてビルドアップする能力も伸びた。素晴らしい人格者であり、素晴らしい選手だ」
“全盛期のロボはヨーロッパ最高の左SBだった”という意見については?
「間違いなくそうだと思う。プレミアリーグで最高のSBなら、世界最高と言ってもいい。このリーグは本当にレベルが高いからね。しかも当時のリヴァプールはCL優勝や決勝進出を果たしていた。だから、彼が全盛期に“世界最高の左SB”だったと言うのは全く大げさじゃない」
あなたは以前、ロボのマンチェスター・シティ戦でのプレッシング映像を、自分の指導で使ったことがあると話していました。
「そうだね。ファンが一番反応する瞬間は2つある。チャンスを作った時か、素晴らしいプレッシングをした時だ。だから、自分は選手たちにこう言っていた。『世界最高の左SBですら、ここまで全力で走るんだ。なら君たちにも求めていいよね?』ってね。メッシやサラーみたいに何人も抜いて点を取るシーンじゃない。ただ、強度高く走り、プレスをかける姿勢なんだ。それが、彼の凄さだった」
あなたが来た時、ロボには何を求めましたか?
「基本的には、ユルゲン時代と大きく変わらない役割だった。彼は元々リーダーだったし、トレントが去った後は副キャプテンになった。でも、肩書きが何であれ、彼は常に“最高のアンディ・ロバートソン”をチームへ与えてくれた。もちろん、彼の強みを活かすことも求めた。オーバーラップやアンダーラップ、ルイス・ディアスやガクポを助ける動きだ。でも同時に、ビルドアップでも少し多くを求めた。中盤との三角形を理解し、どこにフリーの選手がいるか判断する役割だ」
あなたにとって、ロボはどんな人物ですか?
「まず思い浮かぶのは、“面白い奴”ってことかな。いつも機嫌が良い。まあ、自分が起用しない時以外はね!でも、出場しない時ですらチームを助けようとしてくれた。だからこそ、チームメイトもスタッフも彼を愛しているんだ。医療スタッフやパフォーマンススタッフも含めてね。彼は周囲の人間にとって最高を望む人だから。両親は本当に誇りに思うべきだ。素晴らしい選手になっただけじゃなく、素晴らしい人間になったんだから」
モハメド・サラーについて。9年間、これほどの継続は珍しいですよね。
「本当に珍しい。だからこそ特別なんだ。毎年あの数字を残し続けた。1シーズンだけでも異常なのに、それを8〜9年続けたんだから。しかも彼の凄いところは、“3-0や4-0”の時だけ点を取るわけじゃないことだ。苦しい時、必要な時に必ず現れた。昨季、自分は何度も思ったよ。『モー、今こそ必要だ』って。そして彼は毎回、その瞬間を作ってくれた」
昨季、ブライトン戦のゴールは特に重要だったと?
「典型的なモーのゴールだった」中へ切り込み、ファーへ流し込む。昨季は特に、“重要なゴール”が多かった。今のプレミアは昔みたいに5-0や6-0が頻繁に起きない。だからこそ、“1-0”や“2-1”を決める価値がさらに大きい。モーはそれを何度もやった」
あなたにとって、モーとは?
「まず浮かぶのは、ゴールとアシストだ。そして“ビッグモーメントで決める”こと。本当に偉大な選手は、大舞台で現れる。モーはまさにそういう選手だった。彼は、リヴァプール史上最高の選手の一人だ」
人間としては?
「みんな“スーパースターっぽさ”を想像するかもしれない。でも実際は全然違う。とても落ち着いていて、物事を深く考える。目の前に座っていても、“スーパースター”という感じがしない。普通の人間なんだ。家族を愛し、若手を助けようとする。特に今季は、リオ・ングモハたちを本当によく助けていた。ピッチではスーパースター。でも建物の中では、普通の人間なんだ。それは簡単なことじゃない。だからこそ、本当に素晴らしい人間だと思う。彼と仕事ができて本当に楽しかった。まあ、1〜2回くらいは難しい瞬間もあったけどね!でも長い目で見れば、一緒に働けたことは喜びだった。一緒にプレミアリーグを勝ち取れたことは、一生忘れない」
アンディ・ロバートソンとモハメド・サラー。
2人が残したものは、単なるタイトル数では測れない。
彼らは、
“勝つことが当たり前”だった時代を作った。
ロボは走り続けた。
モーは決め続けた。
そして何より、
苦しい時に逃げなかった。
だからこそスロットは、
“彼らは何度優勝しても足りない存在だった”と語ったのだろう。
リヴァプールはこれから、新しい時代へ進んでいく。
だが、どれだけメンバーが変わっても、
サラーとロバートソンが残した“基準”だけは消えてはいけない。
それこそが、
クロップ時代から受け継がれる本当の遺産だからだ。
そしていつの日か、
次の世代が再び頂点へ辿り着いた時。
その土台には、必ずこの2人の存在がある。
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